2017年7月4日火曜日

政策学の復習 その② ~アジェンダセッティング~

◆アジェンダとは?

一言でいうと、「議題」のこと。

詳しく言うと・・・

・政策決定者やその近辺の人々が、注意を払う論点、課題、因果関係に関する知見、シンボル、代替案、解決策のリスト
検討課題のリスト→政府として何を検討するか、というリストのこと

政府には時間も予算も制限がありすべての課題に対して全力を注ぐことはできないので、どの課題(アジェンダリスト)を優先順位上位にするかを検討しなくてはならない。つまり、どの課題を優先順位上位にするかによって政府の取り組みが変わるということである。




◆アジェンダセッティングの位置づけ


政策策定の過程(このような一連の流れを「段階モデル」などと言ったりする。)

①アジェンダ設定→②政策案策定→③決定→④実施→⑤評価(→⑥廃止)

上の流れを見てもわかるが、アジェンダ設定は政策案策定よりも前の段階にあるため、アジェンダセッティングは「前決定」と呼ばれることもある。



◆なぜアジェンダセッティングが必要か

資源は有限だから
・財源や人員といった、政策の資源そのものがまず有限であるため。
・政策決定システムには課題処理容量が存在する。政策決定者(総理大臣など)の周りには常に無数の課題が飛び交っており、どの課題に注力するかが時間的側面からも重要になる。

政策決定システムのボトルネック

この図でもわかる通り、政策の施工にあたって最も難所なのが「国会」である。議会は会期制のため、時間の制約がかなり大きい(時間内に議論が煮詰まらないと流れてしまうこともある)。そのためすべての課題を議論する時間がそもそもない(逆に政策過程の段階でここを通すことを前提に行動することを考えなくてはならない)。



◆アジェンダの種類

2種類ある。

公衆アジェンダ
一般の人々(専門知識を有さない人々)が注目する課題のリスト。
※マスメディアによるアジェンダセッティング(メディア・アジェンダ)は、これと区別する見方もあるが、同一視しても問題はない。

政策アジェンダ
・政策決定に関与する人々(政府内部アクター)が注目する課題のリスト。
※これを出力する際に決定アジェンダという、さらに絞り込まれた短いリスト決定アジェンダ)が作られることがあるが、これは政策アジェンダと同一視しても問題はない。


重要なのは、公衆アジェンダと政策アジェンダが必ずしも一致するわけではないということである。一般人が早く待機児童をどうにかしてほしいと考えていても、政府が国防を優先的に行う、といった具合である。



◆公共政策とアジェンダの関係や地位変化

公共政策において、「アジェンダ設定が政策出力をいかに左右するか」ということが一番の関心事である。注目点は以下の通り。

・政策アジェンダに乗ることが、政策決定の必要要件なのだろうか?
・もしそうだとしたら、政策アジェンダの上位に上らせる要因は何か?
・公共アジェンダは政策アジェンダと一致するのか?
・政策アジェンダがメディアに頻出することによって公共アジェンダが形成されるのか?

などなど・・・

公衆アジェンダと政策アジェンダを分けるのは、これらの問題を考えるためであるといってもよい。


また、アジェンダには、双方向性がある

公衆アジェンダ→政策アジェンダ
・一般的
社会指標悪化や重大事件をメディアが取り上げる→公衆アジェンダ上位→政策アジェンダ

政策アジェンダ→公衆アジェンダ
政府の動きに合わせてマスメディアの報道増加→課題が公共アジェンダを上昇させる ex)高速道路問題など

自己補強サイクル
・政府組織とマスメディアの相互作用
・マスメディアの関心→課題が政策アジェンダに上る→政府が担当組織などを創設→課題に継続的に取り組む政策アジェンダの上位が維持される→政府の活動が活性化するとマスメディアの関心が高まる→・・・ex)男女共同参画など

他のパターン
・課題が公衆アジェンダにのらないまま政策アジェンダに乗り政策決定 ex)専門性が高すぎて一般人にはわからない:政策評価など
・ある課題が政策アジェンダに乗ることを、特定の利益集団や政治文化などが妨害(=非決定)
問題注目サイクル:問題自体はコンスタントに存在しているが、ある時に一定期間注目されたり忘れられたり、またある時に浮上してきたり・・・という循環。不祥事に多い
・政策の窓モデル:



◆アジェンダを動かすものとは

課題を政策アジェンダの上位に押し上げるものは何だろうか
・問題の流れ:特定の課題が注目される過程
①重大事件(ex:花粉症が上位にならないのはこのため)②社会指標(ex:出生率など)③専門家の分析(ex:増田レポートなど)④司法判断

・政策の流れ:課題が、有効で実現可能な政策案と結びつくこと
・政治の流れ:政治家などの様々なアクターの影響により、特定のアジェンダが上位に上がる過程

◆アジェンダ設定から政策決定へ

課題がアジェンダに乗っても、直ちにそれが公共政策の採用に結びつくわけではない。決定においては別の考察が必要になる。
・課題定義の政治性
・非決定
・非決定権力
・ゴミ缶モデル
・政策の窓モデル








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